カニは淡水の川の上流域に生息する「サワガニ」からはじまり、中流域の「モズクガニ」と環境によって生息種が変化していきます。ここまではあまり種類がいないので解りやすいのですが、川の水と海水が混じりあう汽水域に入ると、一気に種類が増えます。主なカニだけで10種類を超えます。これは、カニの子供が海で育つ事に関係しています。陸上で生活しているカニも、産卵の時期は河口付近で目撃されるようになります。
それは、餌をとる能力のまだ低い魚の餌場である事が関係してきます。その場所を住みかとするアシハラガニの生態はどのようなものなのでしょうか。ご説明いたします。
アシハラガニの生態
アシハラガニは以前の分類では、イワガニ科ベンケイガニ亜科とされていましたが、近年の見直しで、モズクガニ科へ移行されました。青森から南の本州、四国、九州、沖縄に分布しています。海外では中国、台湾にも生息しています。河口から汽水域の干潟、ヨシ原のある塩性湿地帯に生息し、淡水域での生息はありません。砂泥に直径約3cmの入り組んだ巣穴を、約40cmの深さで掘って生活をします。干潮時には、群れをなして餌をとりはじめます。雑食の為、何でも食べるその姿は「海のゴミ箱」とあだ名がつく程です。
性格は獰猛で、他のカニすら手にかけることも有ります。アシハラガニの繁殖時期は、7~8月頃で、ゾエア幼虫を海中の満潮時に放出します。海で成長し、稚ガニとなって元の場所に戻ってきます。類似種として、ヒメアシハラガニがいます。とても似ていますが、ヒメアシハラガニの方が約半分の大きさです。主な天敵は、サギなどの海鳥です。敵が来ると素早く巣穴に逃げ込むので、巣からあまり遠くには移動しません。それか、大きい鋏を振り上げて威嚇します。
アシハラガニの生息する干潟を奪っているという意味では、人間も天敵と言えるかもしれません。干潟は埋め立てなどの開発がし易いためどんどん開発が進む傾向にあります。淡水にすむ事が出来ないアシハラガニはそうなってしまうと、生きる事が出来なくなります。
まとめ
ユネスコの世界文化遺産に登録されている、広島県の厳島神社は、潮の満ち引きで景観が違う事で有名な場所です。その世界遺産の干潮時に出来た干潟に現れるのが、アシハラガニです。観光に来た人たちは、そのアシハラガニも含めて、感動を覚えます。アシハラガニは、自分が世界遺産の景観の一部だとは思いもしないでしょうが、今は姿を消し始めている干潟で生き抜いている力強さがあるからこそ、何故か感動を覚えるのかもしれません。